チベットの少年を主人公にした岩佐寿弥監督作品『オロ』が完成しました。
世界最高齢の現役映画監督である103歳のマノエル・ド・オリヴェイラさん(ポルトガル)、日本最高齢の現役映画監督である100歳を迎えた新藤兼人さんに比べれば、息子の年齢と言ってもおかしくない岩佐監督ですが、それでも今年の秋には78歳になります。チベットへの愛をこめて、この映画に着手したのは75歳の夏でした。「喜寿(77歳)までに公開できたらいいね」と話していたのですが、それはどうも無理でした。でも、いま振り返ってみるとこの「締切のない作り方」がこの映画の可能性を広げ、ステレオタイプな鋳型から解放してくれたように思えます。
編集のさなかに2011年3月11日東日本大震災という「ニッポンの受難」を体験したことで、改めて「チベットの受難」に深く共感し、「チベットの希望」をともに祈ることができたからでしょうか。とにかく、どうにか映画館で公開していただける作品になりました。「たくましく日常を生きる」オロ少年、チベットのひとびとを道先案内人にした「失われた故郷(歴史)を想う108分の旅」へ、どうぞお早めにお出かけください。
6月下旬予定の渋谷ユーロスペースでの公開をめざして、ささやかな公式HPを立ち上げました。全国のミニシアターを中心とした映画館での順次公開、そして自主上映へと進む上映活動はきっと2013年までつづくでしょう。「映画芸術とは何か」が問われ、「ミニシアターの存亡」が危ぶまれているいま、映画『オロ』をひとつの実験台にしながら「新たな映画成立の可能性」を探ってみたいと秘かに考えています。本日2012年5月1日から、その模索の過程をこのブログ「オロ上映活動記録」で報告していきます。「ニュース」は必ずホーム(トップページ)にアップしますが、そのほかの「雑文」を読んでみたい方はときどきこのブログものぞいてみてください。
プロデューサー 代島治彦