開館20周年を迎えた札幌の伝説的ミニシアター「シアターキノ」、長崎県に唯一残るミニシアター「長崎セントラル劇場」、映画監督・中江裕司さんが率いる沖縄インディーズの拠点「桜坂劇場」、杜の都・仙台のまちなか映画館「桜井薬局セントラルホール」。北と南で映画文化を守る個性的な映画館で『オロ』が公開されます。
手前味噌になりますが、私(プロデューサー代島)が昨年9月に出版した本『ミニシアター巡礼』(大月書店)に「シアターキノ」と「桜坂劇場」は登場します。それぞれのコーナータイトルを紹介すると。「居酒屋で稼ぎながら、小さな映画館をつくった洋さん」(シアターキノ)、「桜坂劇場の地下茎は、80年代の琉球大学映画研究会まで伸びていた」(桜坂劇場)。両館とも因縁浅からぬ関係なのです、私は。シアターキノの代表・中島洋さんは「エルフィンランド」という居酒屋で稼いだ金と人脈をせっせとつぎ込んで「シアターキノ」を作り、育ててきた人。桜坂劇場の代表・中江裕司さんは琉球大学映研時代から沖縄での映画製作を志し、1992年に劇映画『パイナップル ツアーズ』でデビュー。デビュー作のプロデューサーが私でした。シネマコンプレックスの圧倒的支配、デジタル映画の時代への対応で苦境が伝えられるミニシアターのなかで、中島さんも中江さんもがんばっています。
シネマコンプレックス全盛の中で、いちばん苦しんでいるのが市街地の二番館(封切りロードショー館に対して、ロードショーが終わってから二番目に映画が巡回する映画館)。全国で閉館が相次いでいます。そんななかで生き残った市街地の貴重な映画館が「長崎セントラル劇場」と「桜井薬局セントラルホール」。両館ともに「セントラル」を名乗るところなど、市街地中央のプライドを感じさせます。1960年(昭和35年)に日活の二番館としてスタートした「長崎セントラル劇場」は、父親から経営を引き継いだ二代目の前田眞理子さんによって「長崎のミニシアター」として甦っています。1980年(昭和55年)に「日乃出セントラル劇場」として青葉区中央一丁目に開館した映画館が閉館と開館を繰り返し、ビルの所有者・桜井薬局に引き継がれたのが「桜井薬局セントラルホール」。現在では、仙台唯一の仙台資本の映画館となっています。